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「800字文学館」 日常生活雑感

「何でも書こう会」の経済効果

田谷 英浩

 会を重ねるにつれ参加者が増え、文章力が向上する。誠にめでたい。
 加えて終了後のレストランや駅前蕎麦屋の賑わいは、会員の親睦もさることながら、店の売上げ増に僅かながら貢献している。
 しかしそんなことより、この会が注目されていいのは地方経済や地域活性化に大いなる力を発揮していることである。ここで発表された幾つかの紀行文や涎の垂れそうな美味い料理は会員を旅に誘い、店を探しだすのに充分の力を持っている。
 現に我が同居人は先だってグループを引き連れ出羽三山に向った。コーラス仲間の旅行会の当番幹事で、行き先は何処でもよかったらしい。だが先年発表された「羽黒山にて」を読んで仲間を説得した。伊豆か奈良・京都に落ちるはずの金が東北に移っただけじゃないかと言われると身も蓋も無いが、行き先を変えさせるだけの力があったということだ。
 しかも旅行が終って、周辺に伊豆や京都の話を吹聴しても、いまさらそれに触発されて誰かが出掛けるといった事はあまり期待できない。
 ところが「月山のお花畑はすごかった」とか「羽黒神社の石段に感激した」などと話せば、次には行ってみようという人が現われる。そんな僅かな積み重ねが有名観光地以外の地方を豊かにする。

 景気浮揚と地方活性化の決め手は観光産業にあると考える。地方には自然、歴史、文化のほか固有のもてなしという資源がある。民俗学者宮本常一にならって、「あるくみるきく」、それを書くことで地域活性化の一翼をにないたい。
 私の書いたものが会員諸氏をその気にさせたという例をあまり知らないが、それでも「三大車窓」の一つ長野善光寺平や、秋田稲住温泉に浸かりに行く人が現われた。耳をそばだてれば九州の矢岳越えや根室本線にトライしてみようと言う声も聞こえてくる。
 私自身はといえば、近々「御宿の漁師料理」を試し、秋には「マタギ・サミット」に参加するほか、「八森のハタハタ漁」の見物や「千年のロマン国東半島」行きを考えている。

(2010.6.10)

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