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「800字文学館」 文学・言語・歴史・昔話

「はやぶさ」の大冒険

松谷 隆

 7月29日早朝、『「はやぶさ」は日本の科学技術の誇り』をメルマガで読んだ。これは、6月13日に、7年間60億キロの旅を終え、大気圏に再突入後燃え尽きた「はやぶさ」の打ち上げ前から帰還までの記録をまとめた本を紹介するものだった。

 その記事は、当日発売の『小惑星探査機はやぶさの大冒険』の著者、山根一眞自身が書いたもので、この本を執筆した動機は昨年の秋の「事業仕分け」で宇宙予算が攻撃対象になったためという。そして将来このような事態を招かぬよう、宇宙への取り組みがいかに日本にとり大きな誇りであるか、そして子供たちが未来に希望を抱けるいかに大きな存在であるかを訴えるためと結んでいる。

 すぐ、本を買った。小惑星に到達し、岩石のサンプルを持ち帰る研究会が1985年に発足し、その7年後から具体的な構想作りが始まった。そして1996年にこの計画が正式にスタートしたとのこと。これらのことはまったく知らなかった。

 この本は出版元マガジンハウス社の編集者の「中学生でも理解できる内容に」との要請に応えており、宇宙のことを知らなくてもすらすらと読み進んだ。さらに技術的なことは対談のなかでわかりやすく説明されているので、これも問題なし。

 2003年5月9日の打ち上げから2005年11月20日の長さ500㍍の小惑星イトカワへの着陸までは、時速144㍍から10万キロまで対応した「イオンエンジン」4基のうち1基の故障だけの順調な飛行だった。が、その後はトラブルの続発で、帰還を3年延長せざるを得なかったにもかかわらず、「イトカワ」のサンプルが入った可能性のあるカプセルを持ち帰れたことは奇跡といっても過言ではない。

 読後のすっきり感は何とも言えなかった。日本の技術水準の高さを再認識できた。宇宙航空研究開発機構のスタッフの意識や知識の高さ、それに加えプロジェクト・リーダーの「絶対成功させる」という信念に感服した。ぜひご一読を。

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