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日本一低い山
徳島にいる友人から故郷(ふるさと)自慢のたよりがまた届いた。
今度は日本一低い山だという。徳島市南部の田んぼの中にある「弁天山」がそれで、標高は六・一㍍。自然の岩山で県道脇に朱色の鳥居があり、そこが登山口。「日本一低い山・弁天山」の立看板があるという。登山口からは歩いて十秒、小走りで五秒、要するに三十歩くらいで頂上に着き、そこに水の神である弁才天(弁天様)が祀られている。
登山口横の中華そば屋には登頂証明書が置かれていて、記念品やグッズが売られている。
弁天山保存会なるものがこの登頂証明書を発行していて、先月には登頂十万人を記念したセレモニーが開かれた。
標高六・一㍍にちなんで毎年六月一日には山開きが行われる。
日本にこれ以下はない、あとは昇るばかりで縁起がいいからと最近では山頂結婚式まで行われた。
と、なんとも浮世離れしたような話がユーモラスに綴られている。猛暑、炎暑の中で一服の清涼剤。最近は高さを競うニュースが多いが、たまにはこんなのんびりした話もいい。観光とはほど遠いが、地元の人たちの郷土愛が伝わってくるようで微笑ましい。
ところで日本一高い山に異議を唱える人はいないが、低い山日本一となると、「山」の定義をはっきりさせる必要がありそうだ。そこで国土地理院発行の地形図に記載されている山の条件を覘く。①地元で山と呼んでいること ②自治体がその名称を公式に使用していること ③その山の名称を記載することが妥当であること、といかにもお役所風でなんともあやふや。
しかし現在のところ人工の山、築山では天保年間に川を改修して土砂を積み上げて出来た大阪市の「天保山」四・五三㍍が日本一。地図作成の基準になる一等三角点のある山では大阪堺の「蘇鉄山」六・八四㍍が最も低い山。自然の山では「弁天山」六・一㍍ が断然日本一と公認されている。
ご興味のある方はぜひどうぞ。所在地 徳島市方上町弁才天八の一 JR牟岐線地蔵橋駅徒歩十分。