作品の閲覧

「800字文学館」 日常生活雑感

日記

平尾 富男

 最近BLOG(ブログ)がパソコンの個人ユーザーの間で大流行している。ブログとはインターネット上に公開され、はじめから他人に読んでもらうことを念頭に個人が書いている覚書、日記のことだ。手軽になったデジカメ写真が使われることも多い。
 ブログの命は継続性、出来れば毎日更新されないと新鮮味がなくなり忘れられてしまう。

 他人に見せられない個人の悩みや苦悩を自分の為だけに書き記すことが目的ではないから、心の内面を曝け出して訴えかける内容にはなっていない。ある程度読み手を想定した大人のデジタル版絵日記も多いが、毎日のように投稿される友人の日々の記録を読み、コメントを書いて送るのも楽しい。
 日記とは別のジャンルで、不特定多数の読者を相手にした情報の発信源、手軽なニュースサイトとして利用されるブログも増えている。政治、経済、社会等の分野で、専門家による有料サイトもある。

 10年程前、友人に勧められてそれまで毎日欠かさず書いていた日記に代えて、ブログを試みたことがある。最初の一、二週間は毎日書き込んだが、いつの間にか一週間に一回、やがて一月に一度程度にと投稿回数が減って、結局は全く諦めてしまった。
 他人に見られると思うと本音が書けなくなったことに嫌気がさしたからだ。それに、歳の所為で根気が薄れたのも理由だったかもしれない。今では、過去に書き続けた日記帳も書斎の引き出しの奥に眠っている。

 昭和の芭蕉と言われた種田山頭火は、「焼き捨てて日記の灰のこれだけか」の句を詠み、48歳の時に過去の日記を全て燃やしてしまう。以降、各地を放浪する山頭火は、旅路での出来事を大学ノートに書き記し、「行乞記(ぎょうこつき)」と名付けた、今で言う「旅ログ」を遺している。「俳句は日記だ」と言う山頭火の句集には彼の人生が詠いこまれていて、読む人に深い感銘を与えてくれる。

 いつの日か、読まれて恥ずかしくない日記が書けるようになるだろうか。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧