政治・経済・社会
ブループラネット賞受賞記念講演
去る十月二七日、地球環境保全に貢献された方を顕彰する平成二二年度のブループラネット賞がコロンビア大学客員教授 ジェームス・ハンセン博士に授与され、その講演を拝聴した。講演題目は「人起源の気象変動:道徳的、政治的、法的課題」である。
結論から言うと、温暖化防止のため、大気中の二酸化酸素濃度(CO2)を三五〇PPM以下に維持することが絶対条件である。これを実現するために政治家、企業経営者に行動を起してもらう。必要なら司法の力で強制的に守らせるべきと提案している。
理由は明快で、地球の温度は太陽照射による熱入力と、地球からの宇宙空間への熱放射のバランスで決まる。大気中のCO2が増加すると、熱放射が少なくなり、熱がたまり温暖化する。
太古からの地球の気象を深い地下の地層から採取したデータに基づいて探索すると、現在より温暖化した地球は過去五〇〇〇万年前、火山活動の激しかったころ実在していた。その後ゆっくりと冷えて来て、現在に至っている。その間十万年毎に、地球の天文条件に左右され、寒冷と温暖を繰り返している。
この過去の気象のデータから判断して、現在埋蔵されている化石燃料を燃焼し続けるなら、人起源のCO2の濃度は過去の温暖化した時の地球の状態に近づくと確定的に予測できる。
後世に重大な禍根を残さないため、何をすべきかを講演では順々に説かれたが、ここではその一番大切な順守事項を述べる。
地下に埋蔵されている化石燃料を燃焼し続けないこと。特に、石炭の埋蔵量は膨大で、この安価な資源を使わせないために、これを含めて炭素に税金をかける。その税で新エネルギーの開発を促進する。しかし、企業経営者と、それに押される政治家は安価な石炭に触手がいく。議会、行政府共に機能しないなら、孫子の代まできれいな地球に住める万民の権利を主張して、最終的には司法の力を借り、強制的に炭素の使用を制限すべきだと警告している。
ブループラネット賞は旭硝子財団の顕彰事業です。講演は国連大学で行われました。