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「800字文学館」 日常生活雑感

お焦げご飯

大越 浩平

 十月に白馬山麓に住む知人T氏の木の子会に参加した。帰京して数日後、木の子のお焦げご飯が無性に食べたくなった。妻に聞くと同じくうなずいた。我が家の炊飯器は十年物でお焦げ機能など何も無い。すぐ様電気店に出かけて驚いた、一万円から十万円台迄各メーカーの趣向を凝らした商品が沢山並んでいる。どれを選んで良いのか二人で迷っていると店員が寄ってきた。「玄米はお炊きになりますか」と聞く。妻が玄米は圧力釜で炊きますと答える。「ご希望は何ですか」私は白米と、炊き込みご飯のお焦げがおいしく炊けるのを探していると答えた。すると店員はIH式の機種を推薦してきた。IH式は高熱にならないので私は対象外にしていると言った。
 店員曰く、IH式でも百三十度迄温度が上がるのでお焦げは出来ます、IH式の特徴は釜全体が熱くなり土鍋に近い炊き上がりになるという。このセールストークにころっと参った。妻も同意し特価で展示していた四万円弱の炊飯器を購入した。

 木の子入りのお焦げご飯で使用開始。そのレシピを紹介する。具材は油揚げと、香りを楽しむ舞茸、味を楽しむシメジ類、歯応えを楽しむエリンギ等木の子三種を適当にそろえる。木の子は大きめに裂いて、油揚げの微塵切りと一緒に三~四分炒める、油揚げの油が木の子にまつわりつけばよい。これで木の子の香りと味がぐっと凝縮される。あとは磨いだ米に酒、出し昆布、醤油を加え釜のメモリまで水を入れ塩味を確かめて具材を上に乗せる。お焦げモードでスイッチオン白ワインと燗酒を用意する。醤油の焦げた香りが漂ってきた、今宵はこれで楽しめる。

 炊飯器を一ヵ月使用した、確かに普通のご飯はおいしく炊けて満足だが、肝心のお焦げが白米はそれなりに炊けるのだが、炊き込みご飯のお焦げがパリッと仕上がらない。具材で水加減の調整に工夫してもう少し勉強しよう。それともこれが炊飯器の限界なのか。

(二十二年十二月十日)

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