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「800字文学館」 政治・経済・社会

研究開発で創業を促そう

稲宮 健一

 「世界一でなければ駄目なんですか」が話題になった。歳出削減のための事業仕分けで出た発言だが、昔から「稼ぐに追いつく貧乏なし」と言われている。財政基盤の向上のため研究開発から創業を促し、国富を増やそう。

 現在インターネットは生活の必需品であるが、この種は米国が核攻撃されたとき、同時に起きる通信拠点の破壊によるパニックを避けるため、拠点を多数分散させて接続した通信網の研究から誕生した。初め米国の大学で試用し、それが全世界に普及した。ヤフー、グーグルなど米国の産業の骨格になっている。

 ノーベル賞の小柴さんは、謙遜して自分の研究成果は何の役に立たないと言われたが、素粒子研究の必需品である加速器が癌治療の最前線に転用され使われている。重粒子をピンポイントで癌細胞に照射することで治癒できる。新しい医療機関が興された。

 開発から実用まで、長い期間を費やしているが、確実に創業に繋がっている。

 財政の健全化のため、増税や、歳出削減は即効的であるが利害対立が大きい。これに対して、新しい産業を興し、国の富を増すのは、漢方薬のようにじわりと効いて、永続な成果が期待できる。長い目で見た創業者利益で歳入を増やそう。

 研究開発と言っても、すぐに実を結ぶとは限らない。宇宙開発でロケットや、衛星が失敗した時、すぐ損害が何億とか報道されるが、先端技術の開発に失敗は付き物で、失敗を克服して、初めて技術の確立ができる。先頭を走るにはある程度の無駄も授業料のうちだが、意気込みは世界一でなければならない。

 他方、日本の環境技術は冠たるものがある。振り返れば、深刻な公害を克服するため、高い授業料を払った。そして、今日の環境技術を確立できた。財政も同様な課題であり、直ぐに解決する特効薬はない。正面から取り組み、改善の積み重ねを継続していく以外に解決方法はない。

 公害を克服したと同様に財政の改善にも自信を持って取り組んでもらいたい。

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