体験記・紀行文
最北端と最南端―ゴルフ自慢2―
羊羹でも沢庵でもハシが旨い。その伝に倣って端っこの魅力を書く。日本の最北端ゴルフ場は稚内カントリークラブである。ゴルフの生地スコットランドでは海と農地の間にある緩衝地帯をリンクスと呼ぶそうだが、地図で見る限り、稚内CCは将にそんなコースを予想させた。オホーツク海の横殴りの風が吹きつけ、ボールは海風にあおられて押し戻される…。
ところが訪れた日は快晴、微風。眼下には空港を飛び立つ飛行機、その先には濃紺の海、かすかに樺太や利尻富士も遠望できるという絶好のゴルフ日和であった。
特徴的だったのは、コースが樹木でセパレートされていないこと。だから何処までがフェアウエイで、何処からがラフなのか判然としない。テイ・グラウンドに立つと数ヶ所のピン(旗)がいっぺんに見える。キャデイがいなければ、何処へ打っていいのか迷いそうである。つまり広い平野か牧場の中でプレーしているようで、仮に牛の群れが横切っても驚かなかったろう。そんな牧歌的なコースであった。
数年後、同じ仲間と最南端ゴルフ場を目指した。インターネットなど、まだ普及していない頃、石垣島あたりのゴルフ場が多分そうだろうと電話した。
「いや、小浜島にありますよ。西表島に出来ない限り、あそこが一番南です」。緯度としては台北より南になる「ハイムルミラージュ・カントリークラブ」へ飛んだ。ここはさすが南国。照りつける太陽とコース内には椰子やガジュマルの大木が連なり、ブーゲンビリアが咲き乱れる。樹間から見える海の色は見たこともないエメラルド・グリーン。
そして最大の特徴は、フェアウエイの両サイドに立つ白い小看板の連なり。はてOB杭?と思いきや、「ハブに注意」の看板。ホントにいる?「いますよ!注意してください」。夜行性で昼間は滅多に出ないそうだが、それでも薄気味悪い。力を抜いて真っ直ぐ打つ。お陰で好スコア続出。
こうして最南端コース達成と同時に7番ホールが日本最西端に位置することも分って残すは最東端となった。どなたか根室GCにお付合い下さいませんか。
(2011・1・26-27)