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「800字文学館」 日常生活雑感

犬も歩けば棒にあたる

野上 浩三

 いつの頃からか、「犬も歩けば棒に当たる」が私の生活モットーになっている。この諺には出歩くと思わぬ幸運に出会うと言う意味と、出しゃばると禍にあうという二つの意味があるが、当然のことながら私の目指しているのは前者である。とにかく物好きさが大事で、面白そうな行事や会合に努めて顔を出し、なるべく多くの人と会話を始めるのである。

 二〇一〇年の正月には、近所の知人に誘われて地元の友の会(最近は老人会とは言わない)の新年会に参加した。この地に住んで二五年になるが、顔見知りの人はこの知人の他には一人もいなかった。そして、このことが私のカタカナ生活(テニス、ゴルフ、スキー、マージャン、ペン)の幅を広げることになった。

 春には隅田川のほとりの佃公園に老人会の有志で花見に出かけた。昔懐かしい佃煮を買い、桜の花越しに見えた建設中のスカイツリーの高さに驚き、富岡八幡宮の歴代横綱の石碑で初代横綱明石の存在を知った。その日最大の収穫は門前仲町の有名な大衆居酒屋「魚三」で待っていた。同行のK氏は新鮮な海鮮料理やビールや日本酒を目の前にして「私はまだこの後、この近くで三次会がありますので・・・」と言って控え目に飲み食いしていた。その言い方が得意そうだったので、私は「どんな会合ですか?」と質問した。

 それに応えて出てきたのは「企業OBペンクラブ」という聞きなれない名前であった。

 「ペンクラブ」という響きの良さに惹かれてなおも質問を続けると、入会する気があるかと、逆に質問された。私は自分のカタカナ生活のペンの部分を充実させる格好の場であろうと直感した。

 「ええ、是非紹介して下さい!」

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