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「800字文学館」 日常生活雑感

あるゴルフの付き合い方

稲宮 健一

 「おうまのおやこはなかよしこよし・・・」の童謡に乗って、輪になって踊ったのは小学一年の運動会だった。家に帰ると、けん坊は一人だけリズムから外れて手足を動かしていたので、直ぐ見つけられたと言われた。生来の運動神経の鈍さが知れ渡った。

 会社に入るとテニスが盛んだと言われ、買ったラケットは一度もスマッシュが決まったこともなく、埃を被っている。

 管理職になると、工場全体、部別、部長会など、色々な単位でゴルフコンペが催された。これも職務のうちの人付き合と、クラブ・セットを揃えた。コンペの少し前に打ちっ放しに行くが、方向が定まらない。その場でレッスンプロにアドバイスをもらうが、一遍にいろんなこと言われてもすぐ身には付かない。

 そんな不真面目な状態でコンペに参加するのだが、コースではOBの杭の脇で、こんな長い棒の先で、小さなボールに上手く当たるわけがないとぼやく仲間が必ずいたもんだ。そして共にブービーメーカだったり、ブービーだったりする。

 定年後、会社や、高校の同期が定期的にコンペをひらいていることを聞き、少し真面目に練習するようになった。友人曰く「これからは年と共に皆レベルが下がるのだから、心配しないで参加しなよ」にほだされ、手始めに、ビデオ診断を受けた。画面にテイクバックの姿を再現して、望ましい位置を赤線で示されながら、振りの基本を指導された。同様に、握りや、スタンスもなるほど、最初からしっかり習っておけばよかったと、後の後悔先に立たずであった。

 それらを頭におき、NHKの趣味の講座を見て、テキスト片手に練習場に通い詰め、何とかまっすぐ飛ぶようになった。すると今度はグリーン周りで、飛び過ぎたり、チョロをしたり、ゴールは目の前なのに。紆余曲折のある奥の深いゲームと感じた。

 世間では100を切るのが一応の目安と聞いているが、120を切ればにっこりだ。これから暖かくなる、ブービーにめげず白球を追うか。

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