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「800字文学館」 政治・経済・社会

冷静に対応しよう

野瀬 隆平

 アムステルダムから成田へ向かう飛行機はガラガラだった。乗客はほとんど日本人だけ。大震災から一週間後のことである。行き先を成田から関西空港に変更するとの話もあった。放射能を警戒してのことだ。しかし、結局は成田に向けて飛び立った。

 地震発生のとき、たまたまポルトガルに滞在していた。宮殿を改装したホテルで優雅な夜をすごし、翌朝、部屋のテレビを何気なくつけると、日本で起きた地震と津波のことが大きく報じられている。大変なことになったと思い、家族にメールをすると幸いつながり、無事との返事が返ってきた。先ずは一安心したが、その後もCNNやBBCは繰り返し悲惨な状況を映し出している。特に、CNNは朝から晩まで過剰といえるほどセンセーショナルにとりあげる。

 今回の震災、その自然災害から立ち直ろうとしている中で、逆に人的な要因で被害を拡大させ、結果的に混乱に輪をかけているように思える。事態を正確に把握し冷静に判断すべきなのに、いたずらに不安をかきたてる対応と報道が混乱を招き、一般の人たちをパニックに陥れている。
 例えば、放射能による汚染の問題。年間の被曝量が10ミリ・シーベルト程度なら問題ないと国際的な機関が発表している。とすれば、1時間にどれだけの量を被ったらこの量に達するのか。簡単な計算で分かることだ。1時間当たり1.14マイクロ・シーベルト以上の被曝が一年間続かない限り、この値に達しない。3月26日現在、原発に近い町以外には、このような値は観測されていない。首都圏などは全く問題ない。
 野菜や水の汚染についても同様だ。政府は安全サイドをとって出荷制限を指示したが、これがいたずらに混乱を招き、風評被害をもたらしている。観測された値が数ヶ月続いてから出荷制限をしても良かったのではないか。
 もしも、茨城県産のほうれん草が手に入るならば、私は積極的に買って食べたいと思う。それも有効な災害救援の一つだと考えている。

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