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「800字文学館」 体験記・紀行文

3月11日午後2時46分

都甲 昌利

 3月11日 グラッときた。13階なので揺れはひどい。直ぐ廊下に出て両手で壁を押さえて踏ん張った。家内はリビングの陶器やグラス類の入ったキャビネットの扉を押さえて「神様」と叫んでいた。よろけながら直ぐリビングに行き二人で抑えた。抑えたというよりどっしりとした重量のあるキャビネットにすがったといってよい。
 東京直下型大地震に備えて、テレビ、花瓶などの底に滑り止めを張っていた。本箱などは少し斜めにして、下部に楔を入れて転倒を防ぐ処置をしていたので幸い倒れたものは無かった。二基のエレベーターが止まった。外出するのをやめた。
 電気、ガスは正常。テレビは地震・津波の惨状を映し出した。夕方、東京の帰宅難民を報道していた。

 12日 早朝に、エレベーターが復旧。ひとまず安心。世田谷区に住む姉に電話する。無事だった。テレビはCM無しの報道。被害の詳細が明らかになる。言語に絶する状況を描き出す。私共はただ幸運だったに過ぎない。この世の不条理を想う。スタジオのキャスター、評論家、学者や首相、官房長官が様々なことを言っているが、空しく響く。午後、新宿のデパ地下に食料品の買い物に行く。人数通常より少ない。品数は十分あった。

 13日 テレビは相変わらず東日本大震災の報道だ。モスクワに住む友人からお見舞いのメールが届く。モスクワでは東北地方の惨状ばかりを報道し、東京の現状が分からない。「東京は大丈夫か」というものだった。一番心配なのは福島原発の原子炉のメルトダウンだという。いかにも、チェルノブイリで被害を受けたロシア人らしい。
 夕方、トイレットペーパーと米の買い置きが無かったので買出しに行く。品切れだった。皆買いだめをしているらしい。困った。

 14日 ロスの友人から元気を出すために可愛い子猫のキスをしている画像付きのメールを送ってくれた。
 夕方、トイレットペーパーを探して歩くが無し。牛乳、卵もない。こんな状況が何時まで続くのか。郵便局に立ち寄り義捐金を送る。

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