日常生活雑感
恐怖の右優先
「ヨーロッパでは右優先に気を付けて下さい」と海外駐在経験豊富な同僚に言われてフランスに送り出された。
右優先とは、信号と標識が無い合流や交差点では自分の右側の道路にいる車に進路を譲る、という規則である。やってみるとこれは便利ではあるが、注意力と勇気もいる。住宅地や田舎道では標識の有無と右側を見張っている必要があり、左側に来ている直進車の前にえいっと飛び出す必要もある。夜間の信号点滅時は全方向黄色点滅が普通で通行原則が右優先となるから、主街道側にいて前方黄色点滅で進入すると右からの車と衝突しかねない。
高速道路は流石に本線上が優先であるが、円形になっている道路は注意を要する。入口にロン・ポワンの標識があったなら、反時計回りなので外の車は中から見て右側になるにもかかわらず優先権は中の車にある。標識が無ければ右、即ち外にいる車が優先となる。例えばパリの凱旋門はロン・ポワンではないので右優先である。これを間違えると怖い目に遭うので、知らない道では目の良い家内が右からの脇道と標識を見張ることになっていた。
この規則の起源について、ある年長のフランス人は「馬車の御者は右手に鞭を持つので御者席の右端に乗る。従って彼の視界は右側に大きく開けて監視が利く、逆に左側は良く見えない、そこで右側の馬車に道を譲るという習慣ができ、それが自動車にも受け継がれた」と説明してくれた。これはもっともらしいが、では何故車が左ハンドルになったのかの説明が付かない。
彼らにはこの規則が身に沁み付いているので、駐車場の出入りなどで下手に交通量だけで優先側を決めて標識を立てても、出会い頭で小競り合いが絶えない。放っておいた方が良いのである。今、日本の道路には電力危機による停電で交通信号が消える事への注意喚起の標識が目立つ。これがヨーロッパであると、信号が消えたら直ちに右優先に切り替えて運転するだろうからあまり心配は要らない。