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「800字文学館」 政治・経済・社会

日本の財政再建試算

大泉 潤

 長らくアメリカに次いで世界2位にあった日本の国民所得は、中国に抜かれた。一方、日本の負債、公債発行残高は、1,000兆円に迫る勢いである。加えて大震災の復興資金に債務の積み増しが予想される。収入を上回る支出の残高は、大きな金額となった。日本には金持ちが多く、国債が消化されているから、これを基金と考えれば、算盤は合っているとの説もある。しかし、一つの組織体が、一定の期間に造った借金は返済の義務を負うという説もある。

 ある世代が、借金を返済すると仮定して、どのようになるかを試算してみる。公債発行残高1,000兆円、国家財政規模50兆円、国民所得500兆円、消費性向50%、人口1億3千万人のケースを想定する。国民1人当りの残高は800万円にあたる。また負債の償却を20年とする。年間償却額は50兆円となる。1人当りの家計は、250兆円割る1億3千万人であるから200万円となり、負債の1人当りの償却は40万円となる。平均すれば収入の20%をあてることになる。3人家族であれば、収入580万円、返済額115万円、20%となる。租税20%、社会保障負担15%に上乗せで、合計55%を負担することとなる。現状フランスは租税と社会保障負担額をあわせて66%、独、英は57、50%だから、先進国の仲間入りともいえる。

 すると次のささやきが聞こえる。
A案 借金も資産のうちと考える。返済を考えず、金利だけは支払う。すなわち1%であれば10兆円、1人当たり8万円を負担する。2%なら16万円となる。
B案 なるべく早く債務超過から脱却したいが、30年をかける。1人当たり金利1%を含めて26万円と8万円計34万円となる。

 また別の声も聞こえる。
 今の制度は、先進国日本が、叡智を絞って造った政治制度で選んだ選良が造ったものだ。その結果の負担だから、何も眉間に皺を寄せて心配することはない。せめてペンクラブの作品の推敲に時間を使いなさい。

 さてどのささやきに心を寄せるか。

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