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「800字文学館」 日常生活雑感

脳内核酸と認知症

古川 さちお

 最近 新聞広告などで喧伝されている脳内核酸というものをご存知だろうか。
 (有)毎日元気という、ふざけたような名前の会社が発売している健康食品だ。この会社は震災地の釜石にあり、会社も被害を蒙ったが、製品の主成分である三陸水揚げの鮭の白子は十分に確保できているとのこと。
 宣伝によれば、脳内核酸を摂取していると、高齢者につき物の「物忘れ」がなくなり、失われていた思考力が劇的によみがえるという。
 当初は「例の誇大宣伝か」と見過ごしていた。しかし、はたと思い出したのは、かつて友人の一人が「鮭の白子を食べると物忘れがなくなるよ」と真面目に話していたことだ。早速、札幌に住むその友人にメールで確かめたところ、決して誇大喧伝などしない彼は、今でも白子を愛用しており、「効いていると思うよ」との静かなご託宣である。
 はたして筆者にも効くのかどうか、確かめる術もないので、一度注文購入して効能を確かめてみようと思っている。大震災被災地の会社支援の意味も込めてである。

 新聞やテレビのみではなく、知人などの誇大宣伝では、多くの苦い経験がある。飛距離の出るゴルフクラブ、難聴を画期的に改善する補聴器、四十肩を治す薬、水虫を三日で治す薬、等々、挙げたら枚挙のいとまがない。
 自身の経験だけではない。知人や身内の者で、この種の宣伝にのって、大損した例もある。いつになったら、誇大宣伝がなくなるものか、悩ましい限りだ。
 今回の脳内核酸については、高価な商品でもあるし、効き目ゼロでは大損だが、釜石地区の大震災被害を和らげる意味と、わが身にも押し寄せつつある軽度認知症を緩和するために、一度だまされたつもりで試してみよう。
 結果については全く自信がないのだが、後日報告するので、請うご期待である。

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