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「800字文学館」 芸術・芸能・音楽

映画『阪急電車』に寄せて

清水 勝

 関西では阪急沿線に住むのはちょっとしたステイタスのように思われている。とりわけ阪神間の山の手を走る阪急神戸線・今津線・甲陽線は、西宮、芦屋、神戸東灘区といった静かな住宅地を走っているので有名である。そんなことから私鉄の名前をそのまま採った小説『阪急電車』(有川浩著)が書かれたのだろう。それを映画化したのが『阪急電車=片道15分の奇跡=』で、15分間の車内で繰り広げられる小さな出会いの物語だ。
 物語に出てくる今津線は宝塚~西宮北口までの住宅地を走り、西宮北口から神戸に、そして逆方向は大阪に向かう勤め人が乗っている。昼間は学生の電車でもある。沿線には神戸女学院、関西学院大学、小林聖心女子学院等々があり、映画にも登場する。一方では、宝塚大劇場や宝塚温泉や甲山そして阪神競馬場というレジャー施設もあるが、映画には残念ながら登場しない。
 登場人物はあくまでも女性だ。その女性を巡って「復讐」あり、「DV」対応あり、「泣き」もあれば「笑い」もあるし、素敵な「出会い」もある。そして今津線の8つの全駅が登場する。とりわけ小林駅で翔子が披露宴に着たドレスをゴミ箱に捨て、過去と決別した晴れやかな表情がいい。その他、沿線の人から苦情の出そうなおばちゃん軍団も面白い。これ以上は観てのお楽しみに・・・
 主演の中谷美紀さんや戸田恵梨香さんもいいが、やっぱり重みを出すのは宮本信子さんだった。それに眼鏡を掛けた中年のおばさん役で出ていた女優が判らず、いい演技をしているなと思い、調べてみると何と昔憧れた南果歩さんだった。もう47歳にもなっているのには驚いた。
 この映画で女子高生が憧れの大学として登場するのが関西学院大学である。関西の4つの有名私学を「関関同立」といっているが、全国的に関西学院を『かんせいがくいん』と正確に言う人は少ない。その意味では映画を通じて全国に告知されたことで関学関係者は鼻が高いことだろう。

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