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「800字文学館」 スポーツ

活きのいい渡り鳥

松谷 隆

 セントラルリーグの4月度投手部門のMVPに3勝した広島東洋カープのB・バリントン選手が選ばれた。ひいきのチームではないのに、なぜか彼の名前が気になった。どこかで見たはずと自分のファイルを検索すると次の文章が画面に。
 「……。昨年のドラフト会議での指名数も、日本の89名に対し、アメリカは1482名であった。昨年のドラフト第1位指名選手ブライアン・バリントン選手は、ピッツバーグ・パイレーツの1Aで6勝5敗の成績で、昇格することなくシーズンを終えている。……」
 これは、2003年秋に書いた『マイナーリーグ観戦のすすめ』の一節で、日米の野球界の球団構成、1軍の定員、マイナーリーグの熱のこもった球場風景などにふれている。

 ドラフトでトップ指名の彼がなぜ日本にと、彼の経歴を調べた。当初3年間はマイナーで、メジャーリーグデビューは2005年9月18日、翌年はマイナー、次の年に復帰。だが翌年からクリ―ブランド・インデアンズを始め、3球団を渡り歩いた。それもマイナーとの往復の連続である。成績も芳しくなく、メジャー5年間で勝ち星は、昨年8月ヤンキースを8回2安打に抑えた1勝だけ。9敗、防御率5.62である。
 しかし、彼はまだ30歳、1軍に定着し、常時出場で実績をあげ、メジャー復帰を目指しての来日と理解した。これからどれだけ彼が活躍するか見ものである。
 彼と同じ考えの選手がいる。昨年イチローの年間210安打の記録を更新した阪神タイガーズのマット・マートン選手である。彼は来シーズンのメジャー復帰を目指している。というのも彼もことしで30歳、これからますます実力をつけられる年齢だ。
 かつて、メジャー出身の選手といえば、「助っ人」と言われ、メジャーでご用済みの連中だった。それも高い年俸の。しかし、最近は30歳前後の渡り鳥たちが日本球界に目をつけている。球団には彼らと安く契約できるメリットがあるので、今後も増える。日本の若手よ、負けるな、がんばれ。

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