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「800字文学館」 日常生活雑感

オンカロ「隠された場所」

大越 浩平

 原子力発電が稼動すれば使用済み燃料と放射性廃棄物が発生する。これらはエネルギーとして放射線を吐く。放射線が生物のDNA分子に照射されると、分子や遺伝子を破壊し突然変異や機能障害を起こす。廃棄物からの放射線が生命に影響なくなるまでには十万年かかると言われる(米国の放射線防護遵守基準期間は百万年)。
 これを安全に廃棄する必要がある。地表に保管することは地殻変動や戦争で危険。廃棄物をロケットに乗せて太陽にぶち込めば安全だが、作業中に爆発する危険がある。海底に沈めたいが、生命の海を危険にさらす。残ったのが地下に埋める方法だ。
 この方法を世界で初めて実行している国がフィンランド。フィンランドの地層は十八億年前のもので、少なくとも十万年前後は安定すると考える。そして地下五百メートルまで掘り下げた永久地層処分場の建設が決定し、二千十二年に本格着工、二千百年代に最大九千トンの使用済み燃料等を収容し、完全に密封され十万年の眠りに入る。ここを「オンカロ」と言う。
 六万年後の氷河期を過ぎ、新たな生物が好奇心を持ちオンカロを発掘でもしたら、その時は地球が被爆する。

 日本の使用済み燃料は発電所内の貯蔵プールに冷却保管される。容器は原子炉のように強固ではない。外部遮蔽するのは鉄筋コンクリートの壁。

 使用済み燃料は、東海村と六ヶ所村の再処理施設で処理を行い、ウラン、プルトニウムを抽出し残りをガラス化して最終処分する予定だが、六ヶ所村では試運転のみ行われ、再稼動のめどは立たない。

 再処理工場の稼動までの経過処置で、使用済み燃料の大部分(七千百トン)を英国と仏国に再処理委託し、ウラン、プルトニウム、高レベル放射性廃棄物として返還され、冷却して保管している。原発の貯蔵プールは七割埋まり満杯寸前。最終処分の候補地も無い。

 そして原発被災村民には住む場所がない。

 現在地球には、二十万から三十万トンの放射性廃棄物が地表にある。

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