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「800字文学館」

続「芋焼酎の話」

古川 さちお

 昨年の終わり頃、タイトルを「芋焼酎の話」と「久方振りの美酒」として、二つのエッセイをご披露した。いずれも薩摩芋焼酎の話である。
 文中にある小学校同窓生から、思いがけず今年も珍しい芋焼酎が二本届いた。昨年同様日置市の小正醸造製だが、今回は新しいブランド名「薩摩維新」となっている。感激した昨年の「竹山源酔」と同じ製法とのこと。
 かつて、ふるさとで馴染んだ昔ながらの香りと味の焼酎だ。昭和四十年代に絶えていた農林二号という薩摩芋を用いるのも同じ。昨年は、飲み助だが芋焼酎には馴れていないはずの隣人に「竹山源酔」を差し上げた。 「お口に合わなかったら返してください」としたところ、「あんな美味しい酒は返すどころか、夫婦して一晩で飲んでしまった」となったものだ。
 今回は届くと同時に、女房どのが胸に抱え込む。「これは昨年みたいに人に差し上げちゃ駄目よ。家で飲むのよ」とて、妻に占有されてしまう。そして早速、共にお湯割りにして晩酌で味わってみる。
 東京生まれの妻が、鹿児島言葉を真似て「美味しかなあ!焼き芋んよな香りが残っちょって、甘さがありもんど」と、騒がしい。
 「その通り、これが昔の薩摩焼酎の味だよ」と、わたし。
 芋焼酎の味の決め手は水と原料。竹山村に湧く霧島源水と自家産薩摩芋に同じく自家製米麹を使用する貴重な焼酎。過日、OBペンの某才女に伺った話によると、前記エッセイにつられてネットで「竹山源酔」を購入して味わわれた由。気が向いたら「薩摩維新」も味わってみられることをお勧めしたい。いや、待たれよ。これは、「県内限定」とのこと。
 生産量が少ないので貴重品とされる美酒(焼酎)「伊佐美」や「森伊蔵」は高価で勿体ないし、入手も難しい。そこで誤解を恐れずに筆者が推薦するのは、次の二種である。

* 出水郡長島町の「島美人」・・・万人に飲み易い柔らかな味。
* 伊佐市菱刈町の「黒麹つくり伊佐錦」・・・通常の「伊佐錦」より少し割高。

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