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「800字文学館」

9月19日の出来事と20日の新聞報道

大越 浩平

 平成23年9月19日、明治公園で鎌田慧、内橋克人、辻井喬、坂本龍一、大江健三郎、鶴見俊輔、落合恵子、瀬戸内寂聴、澤地久枝氏らの呼びかけで「さよなら原発5万人集会」が開かれた。福島各地からの参加者もあり、6万人(主催者発表)が原発依存社会からの脱皮を訴えた。原発安全神話から目覚めた国民の行動だ。
 東電と電気事業連合会は、朝日新聞社を巧みに策謀し、原子力PR広告を1974年7月から、毎月全国版に掲載させることに成功した。
 すると原子力推進の読売新聞社も全国版に広告を要請し受注した。毎日新聞社も依頼にきたが、電事連はけんもほろろに追い返した。毎日は原発反対キャンペーン記事を連載中だった。毎日は広告費欲しさに「原発容認」に転向する。
 新聞の広告費は高い。全国紙、地方紙合わせて年間10億にもなり広報予算ではとても賄えない。そこで電自連は九電力社長会で「原発PR予算は原発建設費の一部だ」と訴えて認められた。
 この瞬間から様々なメディアによる「原発安全神話」が発信される。原子力安全神話のお墨付きは、東京電力から研究費をたっぷり寄贈されている東大の御用学者達が与えた。
 明治公園集会の新聞報道に興味を覚え、20日の朝刊を調べた。読売、産経/1面、社会面ともに記事無し。日経/1面記事なし、社会面記事あり38.5平方㌢。朝日/1面写真入り記事、193・5平方㌢、社会面記事無し。毎日/1面写真入り記事200平方㌢、社会面記事あり。東京/1面写真入り記事308平方㌢、社会面記事あり。
 記事の扱いとスペースには新聞社の報道姿勢が伺えて興味深い。これからの日本を考える、6万人の国民が意思表示している行動を、翌日に一行も報道しない新聞が存在する。
 読売新聞社は「新聞信条」の一つに「真実を追及する公正な報道」を掲げている。
 3・11まで、各新聞社の「原発安全神話」報道は、戦前の「神州不滅」と同じ道を歩んでいた。高齢者は騙されない。

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