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「800字文学館」

国際森林年

稲宮 健一

 今年は国際森林年とのことで、これを記念した講演会に出席した。森林の大切さが国際的に再確認され、活用と保全を見直すことが主旨である。
 最初の講演者、C.W.ニコル氏は、カナダでは熊の住む森を介して、熊と川を遡上する鮭の間に循環があり、これを通じて森が育成されている。熊の住める森を維持することが大切だと訴えた。これを踏まえてカナダは皆伐のような乱獲を抑え、森林の自然保護を進めているとのこと。豊かな森が豊かな水産物を生む。

 次に、住友林業と三井物産の話は国内では四万ha程の社有森を有した林業経営の題目であった。いずれも百年程の営業実績があり、戦後一時期木材の国内需要が活況を呈したが、昭和三十年ごろから安価な外材に押されて、国内の林業は苦境にある。しかし、森林は単なる木材資源ではなく、生物多様性のための自然保護や、豊かな水資源のための公益的な役割を持つので、木材産業の合理化を行いつつしっかり採算に合うに経営している。

 普通、最初に林野庁から国内の林業の現状や方向性が話されるべきだったが、それはなかった。
 実は、国内の林業一般は疲弊している。その原因は安い外材の輸入と、急峻な山間に植生する国産材の高コスト体質にあるとのこと。しかし、他国の例を見ると、必ずしもこれは当らない。オーストリアでは、日本の十五%の森林面積に対して、日本と同じ程度の木材を産出し、ドイツでは四十四%の森林面積に対して、二・七倍の木材生産量を上げている。
 疲弊は高度成長期に積極的な合理化を怠ったことが主原因のようだ。計画的伐採と植林、伐採用の林道の構築、伐採から木材製造にいたる一貫した機械化が必要だ。類似の他国のように日本でもできるはずだ。
 これからの世界の趨勢は伐採と植栽を循環させたうえ、自然保護を伴った林業経営が求められる。日本の豊かな森林資源を国産木材の増産と、生物多様性の保全のための保護を両立させた対策が求められる。

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