石が流れて木の葉が沈む
政治学の最初の講義で教えられた定理である。55年前の強烈な印象は今でも鮮明に思い出される。その時教授が伝えようとしたことがやっと理解できるようなった不明を恥じるばかりだ。
今日本は、豊かな生活を享受している。住まいには便利な道具が溢れ、電気、ガス、水道も自由に手に入る。外出すれば、交通機関、買物もスムーズで、文化、教養の刺激も尽きることがない。数字で見ると、世界200カ国中、人口1億人以上の国のうち1人当りのGDPが3万ドルを超えているのはアメリカと日本だけである。が、日米欧の主要国は低成長、新興国が高成長で、日本は踊り場で足踏みをしている。
今日本で起きていることを並べてみる。
・国は収入の20倍の借金を背負いながら、根本的な解決策を案出できず、毎年積み増すばかりだ。
・選挙民は、地域の利益を優先する政治家を選ぶ。政権党は窓口を一本化し、予算の配分に絶大な腕力を振るう。
・大多数の人々は生涯自助努力を忘れている。人生計画で最も大事な老後の人生を年金に頼っている。そして年金の給付に見合う負担は少ない政党を選ぶ性向になっている。
・政治、選挙に無関心層が増え、世論調査で意見を求めても、どちらとも言えない、支持政党無しが最も多く50%に達している。
・1年任期の首相は財政再建に取り組む姿勢を見せたが、見るべき実績を残せていない。
・日本は、国会至上主義で、多数決が最大のルールとなっている。国家の将来、国民の幸福を唱えても、政局を有利に導くことを最優先している。消費税は上げません、地元に補助を沢山つけます、事業も誘致します等の利益誘導の小選挙区制で選出された議員が多数を占める。
・国は事業を行っていないから、剰余価値を生み出すことは無い。歳出を切り詰める他に手は無い。お上は歳費、官舎、人員も眼に見える節約の効果を上げていない。
「石が流れてこの葉が沈む」の意味がわかった。辞書には、物事が道理と逆になることのたとえ、とある。