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「800字文学館」

最も下品でくだらない話

都甲 昌利

 高等教育を受けているのに下品な話を得意とする会員10人ほどのグループがある。会のメンバーではないが、ガンで亡くなった作家・評論家でロシア語通訳者の米原万里さんもお好きだった。『ガサネッタ・シモネッタ』、『パンツの面目、ふんどしの沽券』という著書もある。
 先日このグループの会合があった。最優秀な話をした者に賞金を出すというのだ。
 元新聞記者で学芸部担当だったという60代半ばの男がしゃべり始めた。風貌は白髪交じりの長髪で、黒縁の眼鏡をかけ色白で、よれよれの背広を着ている。少し酔っていた。こんな話は酔わないと話せない。
「え~、今日は洗濯いや選択チョイスの下品な話をします。」と喋り始めた。
「人生には二者選択をしなければならない時が多々あります。結婚するかしないか、学校は公立か私立か、生きるべきか死ぬべきかという具合です。選択を間違えると大変なことになります」と云ったところで水割り焼酎をぐいと飲み干した。
「さて皆さん。これからが本番です。皆さんはカミ(神)になりたいと思ったことはありませんか。カミにも二種類あるのです。ここに選択が始まります。
 一つはgodの神で、もう一つはトイレのカミ(紙)です。皆さんはどちらを選択しますか」
「トイレの紙になりたい」と皆が答えた。
「はい、分かりました。トイレの紙にも二種類あります。男トイレに行くか、女トイレに行くかです。また、選択です。人生は選択と云いましたね」
 鼻の下を伸ばした男どもが一斉に「決まっているさ女トイレだ」と応じた。ここで皆がどっと笑った。この男は一体何を言い出すのかという表情になった。
「女トイレに選ばれた紙は前部に行くか、後部へ行くかです。皆さんはどちらを選びますか」
「前がいい」
「話はまだ続きます。悲しいかなこの紙は用が済んだ後、ぽいと捨てられてしまいました。私はこの貴重な紙を拾い、家に持ち帰りました。捨てる神あれば拾う神ありです。私の話はこれで終わりです」
 この話は入賞しなかった。

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