オリンパスと日本国
先ごろオリンパスの簿外の巨額債務が話題になった。九〇年頃から本業を離れた財テクに手を出し、ピーク時に一三〇〇億円に上る負債を抱えた。普通なら、この会社は潰れてしかるべきだが、現在でも時価総額三一二七億円で評価され、営業は継続している。
その訳は世界シェア七割に達する内視鏡に代表される医療機器の実力が高く評価されているからだ。巨額債務もその技術力で乗り越えられると判断され、現在でも株価は千円台を維持している。
では日本国はどうだろうか。全体の債務残高は一二〇〇兆円、プライマリバランスもままならず、債務が積み上がっている。これを是正するため、消費増税が持ち上がっているのは当然の流れである。同時に、債務に対して資産は十分あるので、増税の前にまずやることがあるだろうと言う提案もありうなずける。経済は生きものだから、増税は必要とは思うが、そのタイミングが肝要だ。また、増税と対をなす歳出削減は目標に達成できる道筋を明示しなければならない。何れの削減も既得権の剥奪であるから、当事者は激しく抵抗をする。政治はそれに打ち勝たなければならぬ。かつての廃藩置県、農地解放などは社会の激動期だったからできたのだ。
消費税、歳出削減、インフレターゲットなど、金融政策で国の方向が決まるように語られているが、オリンパスの内視鏡のような強みを維持し、かつ増やしていく底力が国として重要だ。ひところは、厚い中間層が国の活気の源泉であったが、今や格差の拡大などで、これが失われかけている。金融政策もさることながら、強みの拡大と、周辺の国々を意識した中間層の知的レベルの向上を図る産業育成策こそ一番必要ではないか。
大雑把な言い方だが、国の方向として、世界一高効率な生き方の手本を創り世界に広げること。さらに文化面では世界の人々が自国の文化向上のため、日本を思い浮かべるような国づくりができる人材が多数育っていって欲しい。