3600年前の数学(その二)
先回は、「100個のパンを分配する」問題を紹介したところで紙面が尽きた。そこで今回はその続き。即ち100割る13をどのように計算したかを見てみよう。
その前に、古代エジプトで1より小さな数字をどう表わしたか、を知っておく必要がある。十進法をとっていた彼らも、0を知らず小数点以下の数字という概念が無かったので、1より小さい数字を考えるにあたっては分数を用いた。
即ち、1より小さなものは、1を二等分したもの、さらに小さなものは三等分したもの、という具合に分子を1とする分数で、分母をどんどん大きくして、1より小さな(量)数を表わしたのである。今日的にいえば、整数の逆数の数列を思い浮かべればよい。
さて、問題に戻る。100個のパンを13の山に分けてゆくと、7個ずつは13すべての山に配れるが、100-7x13の残りの9個は、そのままでは13の山に分配するには足りない。そこで、9個をそれぞれ半分にすれば18個になり、13の山に1個ずつ分けられる。けれどもまた5個残る。それを更に二等分しても10個で13の山に分けるには足りない。それではと三等分すると15になり、13の山に分けて2個残る。これを13で分けることとなる。
従って、答えは7 1/2 1/6 1/39 となる。(我々も7という整数の後にプラスの記号なしに1/2と書き加えて、7カ1/2とするが、当時は更に分数を書き足して行って、それらをすべて加えることを約束事にしていた。最後の1/39は2/78を約分したもの。)
しかし、もう少し賢い分け方がある。7個ずつ配ったあとの残りの9個のパンを二等分ではなく、それぞれ三等分すれば27個になり、13に分ければ2個ずつで、1個しか余らない。それを13等分すればよいことになる。
そこで、パピルスに記されている答えは、7 2/3 1/39 となっている。
今日の我々から見ると、一見ややこしい計算方法のように思えるが、実際にパンを分ける人の立場からすると実用的だ。パンを9/13個ずつと言われても、どう切り分けたらよいか困ってしまうから。