新生日航を政争の具とするな
2010年1月、日本航空は経営破綻したが、今年9月、株式を上場し再建を果たした。この日航の再建、株式再上場をめぐり、自民党などから「過剰な公的支援で、公平な競争が損なわれる」と早くも批判が出始めて政争の具になっている。全日空の幹部が自民党に泣きついたものと思われる。日航再建は自民党政権下では失敗に終わった。代わった民主党政権は再建を企業再生支援機構に委ねた。3500億円の公的資金を注入、金融機関から5200億円の債権放棄、また日航自身は効率の悪い大型機の売却、不採算路線からの撤退、1万6000人の人員整理、OBの年金カットなどを実施して再建を果たした。
全日空と自民党の言い分は「公的資金の恩恵を受けながら、公共性の高い地方路線から撤退し、東京ーボストン線など新規国際路線の開設など積極的な投資をするのは問題がある」というものだ。更に「今年の決算に対しても会社更生法に伴う法人税免除の“特典”を受けている。税金を支払うべきだ」と出張している。国会でも再建した日航の資金力、投資力によって公平性が歪められていると政府を攻める。日航の再建策は前原国土交通省が政治主導で決めたもので、野党の自民党からすれば格好の攻撃材料だ。
日航は「会社更生法という法律に則り、リストラという身を切るような思いで、粛々と再建に励んできたもので、法律的にも倫理的にも何らやましいところはない」と反論している。
国土交通省は公的支援を受けて再建した日航と全日空やスカイマークエアラインのような航空会社との公正な競争を確保するために、日航に地方路線の拡充や地域航空会社の支援を求めると発表した。羽田雄一郎国土交通大臣も「公的支援で再生した会社が航空会社間の競争を歪めることがあってはならない」と談話を発表した。
昨今の政局は行き先不透明だ。年内解散も視野に入れれば、野田民主党政権が退陣し、自民党政権が登場したら日航は厳しい局面を迎える。