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「800字文学館」

ロシアは民主主義国家か?

都甲 昌利

 最近のロシアの指導者の言動を見ているとロシアが民主国家とは思えない。
 2008年プーチン大統領が辞任し、メドベージェフが大統領になったと思ったら今年再びプーチンがなった。欧米諸国では絶対にありえないことがロシアでは起こっている。
 そもそも民主主義とは正当な選挙によって選ばれた議員が政府を構成し、行政、立法、司法が分立しチェック機能が働き、言論も自由で少数意見を尊重して最後は多数決で政策を決定するものだ。
 プーチン政権は民主的な選挙を経て選ばれたと主張しているが、反対勢力を弾圧し選挙違反を犯して政権の座についた。不正を暴いた新聞記者は暗殺されてしまった。反プーチンのロックバンドのメンバーも禁固刑だ。

 昨年9月、メドベージェフ大統領(当時)の肝いりでモスクワ北東250キロのボルガ川が河畔にある都市、ヤロスラブリで民主主義国家に関するセミナーが開催された。これはリベラル系ロシア人中心となり、ロシア人、欧米人、アジア人300人あまりが参加した。共通テーマは「現代国家:民主主義のスタンダードと効率性」で「民主主義の多様性」、「国際法」、「安全保障と地域主義」など各分科会に分かれて活発な討議がなされた。参加者の中にはイ・ミョンパク韓国大統領、ベルルスコーニ伊大統領などもいた。日本からは鳩山元首相、東郷和彦元外務省欧亜局長、都甲岳洋外務省顧問を始め田中東大教授、石川NHK解説委員らロシア専門家が参加した。
 このセミナーは民主国家先進国の首脳に学ぼうというロシアの良識派の指導者の意識の表れで喜ばしいことであるが、肝心のプーチンが理解してない。大規模な反プーチンデモが行われることに対し、刑法に「中傷罪」を復活させ、外国から資金を得て政治活動に携わるNGOには「国家反逆罪」の適用範囲とした。
 メドベージェフとプーチンの不仲が囁かれる中、来年1月には日露首脳会議が予定されている。果たしてプーチンはその強権をどのように発揮するか。

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