エコロジカル・フットプリント
旭硝子財団が主催する今年度のブループラネット賞の受賞記念講演を拝聴した。W.E.リース博士と、T.E.ワクナゲル博士が提唱するエコロジカル・フットプリントが演題である。
人類は化石燃料を含め、自然の恵みを使い、結果として生じた廃棄物を自然の浄化作用で元に帰してきた。産業革命以前はこの関係は安定に推移していた。しかるに近年、自然からの取り込みが浄化を上回り環境破壊が著しい。端的な指標が、大気中の二酸化炭素濃度が二八〇ppmから、安全限界値の三五〇ppmを超え、四〇〇ppmに迫っている。その結果、生物の北限の北上など、バイオエコロジの急激な変化、猛暑の襲来、台風や、ハリケーンの大型化など、我々の生活環境に悪影響を引き起こしている。
この環境破壊の程度を分かりやすく定義したのがエコロジカル・フットプリントである。即ち、人の消費するための生物資源の生産域と、その生活から排出する廃棄物を持続的に生物資源を通じて吸収できる全面積で表現できる。生産し、消費し、浄化する閉じた系をなす面積である。
地球の能力として、この閉じた系の中で持続可能な環境を保つため要する生態系の面積は人間一人当たり一.八gha(グローバル・ヘクト・アール)に対して、現在の廃棄物を処理するためには二.八ghaの生態系が必要である。これに人口を掛けると、生存に寄与できる全面積が出る。すでに地球の持つ環境収容能力を五〇%超えている、或いは地球がもう半分必要と言っている。能力を超えた分は処理できずに蓄積して、地球の環境破壊を起こしている。多くの工業国で基準を超えている。
この基準を超えている日本としては自国の排出削減に努めると同時に、砂漠化の防止、森林資源の再生、優れた省エネ技術を世界に広め改善に寄与できる。長期的な観点からは、尽きることのない、かつ現在のエネルギー需要を十分満たせる太陽照射エネルギーの活用が王道である。