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「800字文学館」

まだ走るママさんランナー

松谷 隆

 昨年11月18日、ママさんランナー赤羽選手の復活ぶりを見るため、横浜国際女子マラソンのスタートの山下公園へ行った。スタート地点は大観衆で、近寄れない。そのなか定刻12時10分に138名のランナーが走りだす。
 レース途中の10㌔地点と15㌔地点両方が見られるJR磯子駅、スタート地点から近い25㌔と2度目の折り返しのあと32㌔になるスタート地点で彼女の走りを見ることにしていた。
 が、いつもながらの走りが見られたのは先頭集団にいた15㌔地点だけ。次に移動中、ラジオは「赤羽が24㌔手前で遅れた、3日の駅伝で足の故障」と伝える。32㌔での彼女の走りは腰が落ち、スピードが出ない。
 トップと8分半、日本人トップとも5分の大差の8位でゴール。3月の名古屋国際と全く同じ状況だった。これが最後、いや、12月16日の全日本実業団女子駅伝が彼女の引退レースかと思った。そして、当日、彼女はエース区間を走る。結果は、5人を抜くも、区間19位と昨年同様冴えず、チームも29チーム中、24位に落ち込んだ。

 だが、夫の周平コーチは、翌日のブログで「次に狙うレースは決めている」と述べ、さらに21日には「岡山に来ている。23日の山陽女子ロードレース大会のハーフマラソンに出場」と書いている。これには驚いた。
 さらに仰天することが起きた。結果はなんと昨年に続き連覇。タイムは前回の大会新に40秒遅れの1時間9分56秒、足の痛みも消えないのによく走ったものである。出場した理由は「今年は結果を出せていない。練習不足でもなんとか来年につながる走りをしたかったため」という。この優勝で走る意欲がまた出てきたに違いない。
 まだ8月の世界選手権出場を諦めていない。4月に海外のレースに出るという。恐らく2度走っているロンドンマラソンだろう。そこで代表に相応しい結果を目指し、合宿に入っている。今度こそ故障なしでレースを迎えてほしいものである。

(25・1・9)

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