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「800字文学館」

蛇の寺(巳年にちなんで)

都甲 昌利

 今年は巳年(へび年)だ。つれあいが巳年なので、昨年暮れに京都に行った際、ヘビに縁のあるお寺を探してお参りしたいと思った。京都観光協会で調べてもらったら、「2013年(巳歳)干支まいり」という資料をくれた。あるある全部で19もある。この資料には「蛇の姿が見られるところ」、「主な弁財天が祀ってあるところ」、「蛇にまつわる伝説や史跡」に分けられ、寺社名、縁、所在地、JR京都駅からのアクセスが記載されていた。全ては廻れないので、それぞれのカテゴリーから、ひとつを選んで訪れることにした。

「蛇の姿を見られるところ」から養源院を選んだ。場所は三十三間堂近く、市バスを降りて地図を見ながら細い路地をはいると住宅地だ。その奥まったところに養源院があった。古びたお寺だ。住職によると蛇は脱皮をして成長する、再生を繰り返すという意味で祀られたという。お堂に白蛇の額が多数飾られていた。
「弁財天を祭ってあるところ」からは妙音堂をピックアップした。宿泊していたホテル・オークラから歩いて行ける距離でもある。出町柳から鴨川を渡ってすぐだ。ふと鴨川を見ると人が歩いてわたっているではないか。川の浅瀬に大小の石が置かれて、子犬を連れた子供もヒョイヒョイと渡っている。我々も真似をした。京都には何度も行っているが、鴨川を歩いて渡ったのは初めてだ。
 妙音堂は小さなお堂だ。街の真ん中なのに訪れる人もいない。ここには青蛇の額が飾ってあった。
「伝説や史跡」には文句なく安珍清姫の物語だ。想いを寄せた僧・安珍に裏切られた少女・清姫憤怒のあまり蛇身に変化し、道成寺の鐘の中に逃げ込んだ安珍を焼き殺す話だ。道成寺の釣鐘が京都の妙満寺に現存しているというので訪れた。出町柳から叡山電鉄鞍馬線の「木の野」駅から徒歩約10分。洛北の一角を占める広大なお寺で、法華宗総本山である。鐘は高さ1メートル、直径60センチ、厚さ5センチ、重さ250キロの堂々たるものだ。
 果たして今年、つれあいにご利益はあるかどうか。

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