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「800字文学館」

「限定醸造」ビール騒動

大越 浩平

 コミック誌を買いにコンビニへ行く。最近のコンビニは品揃えが豊富、酒類も充実している。見慣れない缶ビールが眼についた。「蔵出し生ビール」限定醸造とある。気になって二本購入した。支払いの際に、未成年でない承認を求められ、ディスプレイに拳固でコツンと力強く承認した。
 飲んだ、旨いのだ。またコンビニで買うのは不愉快なので、翌日近くの酒屋にそのビールを頼むと、その商品はコンビニ限定商品なので、仕入れが出来ないと言う。しかたなくいつものビールにしようと思ったが、ふとエビスの赤い缶ビールの噂を思いだし、店主に聞いて購入した。ゴージャスな赤缶だ。
 蓮根のはさみ揚げを摘みに飲んだ。これが驚きと騒動の始まりだ。飲み口味も、こくありすっきり、喉越しの香りは初めてで衝撃を受けた。一缶空け、この味の一人占めはいけない、これは我がペンクラブの酒友達に味わって貰いたい。季節限定商品なので無くなってからでは遅い。もう一缶抜き、飲みつつほろ酔いで急いでメール。
 酒友達の反応は早い。情報多謝、昨日はロシアの旨いビールを飲んだと返信あり。そのメールにロシア通日本酒党の酒友は、すかさずそのビールは、何とかの三番、女と酒は時々変える方が旨いと反応。在仏の長い酒友は二件スーパーを回って買えず、著名な**石井で購入。旨い、しかし仏で飲んだアルコール度8%の香りに近いが遠い、日本で8%を醸造出来ないかと熱望の反応。北米住人に近い酒友は、数件探して結局著名な店で購入、旨いと喜んでくれた。前日売り場に山積みで安心していたが、翌日は売り切れ寸前、急いで購入した酒友や、簡単に購入できた酒友は、一ダースクラブの会合で配るとメールが入った。購入出来なかった酒友達は喜んだ。
 十日間飲み続け、いつものビールに戻る。この薫り華やぐ赤缶はハレのビールだ。
 メーカーは、この味と香りの延長で、アルコール度8度に変身させ、定番化し、新しいビール文化を是非楽しませて欲しい。

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