二つの長い石段
二日続けて長い石段を昇り降りした。
毎年、伊豆山にはクラブの合宿で来ているが、宿から出て辺りを散策したことがなかった。今回は、温泉に浸かりに来たので、時間はたっぷりある。町は山の急斜面に広がり、ホテルはかなり高い所に建っている。その近くに伊豆山神社がある。
神社へは、海辺の「走り湯」から長い階段の参道が伸びていて、段数は全部で837段もあるという。ただ、途中にいくつかの道路が横切っているので、一つの階段として繋がっているようには見えない。
正確な段数を教えてくれたのは、境内の立札である。三年ほど前に、浜から本殿前まで何段あるか、多数の参加者に呼びかけて調査した結果だとある。散策で、実際に石段を歩いたのは、神社からバス道路までの下り198段と、走り湯から国道までの上り409段で、合わせて600段ほどを昇り降りしたことになる。
翌日、熱海から日本平にある久能山の東照宮に向かった。家康を祀ってあるこの神社を訪ねるのは初めてだ。駅からバスに乗っておよそ40分で、参道の入り口に着く。270mの久能山にある東照宮には、ここから1159段あるという長い石段を昇らなければならない。石段は真っすぐではなく、九十九折になっている。一段ずつの段差はあまりないけれど、途中で何度か休みを取って呼吸を整えないと苦しい。途中で、幼稚園児の一団が先生に引率されて、階段を元気よく降りてくるのに出会う。色とりどりの帽子をかぶっていて何とも可愛らしい。
やっとのことで、たどりついた本殿は、最近、塗りなおしたのか、色鮮やかである。満開の緋寒桜が、境内をより一層華やかなものにしている。本殿から更に奥へ階段を40段昇ったところに家康公のお墓がある。遺訓である例の
「人の一生は重荷を負って遠き道をゆくが如し……」
が掲げてあった。苦労して階段を昇ってきたことを、何か見透かされているような気がした。お参りを済ませて、また長い石段を踏みしめながら帰路についた。