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「800字文学館」

バブルの再来か

野瀬 隆平

 安倍首相が大胆な金融政策を打ち出し、同じ考えを持つ黒田氏が日銀の総裁になった。具体的に政策が実行される前から市場は敏感に反応して、円安が急速に進み株価は上昇した。
 日本の経済が良い方向に動き出したかに見える。しかし、この政策に懐疑的な人たちも少なからずいる。特に、金融緩和に反対の立場を取ってきた新聞社は、デメリットや危険性を強調し、これまでの自分たちの主張が間違っていなかったことを示そうとしている。
 確かに、この政策に問題が無いわけではない。実質経済に回りきらない余ったお金が、株や土地などの投機的な商品に流れ、かつて経験したバブル現象が再び起こるという危惧である。

 一言に「バブル」というけれど、具体的に何を意味するのか。通常、商品には、それ相応の定価がある。しかし、定価の無いものがある。例えば、土地の値段はその時の相場で決まる。また、価格が投機的に変動するものの典型としては株式がある。金融緩和で資金がふんだんに供給されると、余剰資金がこのような投機的な商品に向かう。値段が上がって、一見、景気が回復したように見えるが、実質的な経済が回復したとは言えない。
 土地や株価が高騰したとき、それがバブルなのかどうか、どうすれば判断できるのか。地価はそれに見合ったコストもなく判断が難しい。一方、株価については、いくつかの判断する基準が考えられる。例えば、一株当たりの純資産と比べて見る株価純資産比率、PBR(price book value ratio)と言われるものだ。

 日経平均株価が4万円近くになったバブルの頃は、この値が6を超えていた。4月23日現在のPBRは1.46である。どの水準になったらバブルの赤信号が灯ったと考えればよいのか分からないけれど、一つの判断基準にはなろう。
 しかし、所詮バブルというものは、異常に膨らんだ相場がコントロールできなくなり、暴落して初めてそれがバブルだったと判るもので、誰にも前もって明確に予測することが出来ないものである。

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