作品の閲覧

「800字文学館」

花にたとえると・・

内藤 真理子

 女性同士で集まると、たわいもなく自分をどんな花にたとえるか、などと言いあったりする。
 それぞれが、コスモス、ひまわり、深紅のバラ、等々かしましい。
「私は、カサブランカ」と、一人が言った。
 それがあまりに彼女のイメージ通りだったので、みんな、絶句。
 百合と言えば〝清純、上品、芯が強い〟という言葉を思い浮べるが、同じユリ科でもカサブランカというと〝誇り高い、華やか、鼻っ柱が強い〟と、ニュアンスがちがう。
 まさに彼女は〝カサブランカ〟なのだ。
 切れ長な一重まぶたの目、黒のジョーゼットのワンピースがよく似合う白い肌。ブラックユーモアが得意で、みんなから一目おかれ、恐れられてもいた。
 まだ四十二、三の頃、彼女は癌で夫を亡くした。通夜の席では言葉をかけるのがためらわれるほど、毅然としていた。
 結婚以来、姑と同居していた彼女は、とうとう夫婦水入らずの開放感を味わうことがなかった。
 私も同居しているが、夫婦仲良くしていても、喧嘩をしても、いつも八分目におさえているような気がするので、彼女も、どんなにか残念だっただろうと思って、そう言うと、いたずらっぽく笑いながら、
「一番大切なものを亡くしたのよね、私。それなのに一番大切な息子を亡くした姑にすがって泣いたのよ。そうしたら、よしよしって。でも彼女の肩がね、とっても小さくて、あー私が慰めてあげなければ、って思ったのよ」と言った。
「ね、カッコいぃー!カサブランカァー!でしょ!」

「えっ、私?…私はモッコウバラ。トゲはないし明るい割には目立たないから」と冗談交じりに言うと、みんな一斉に、モッコウバラの、クリーム色の小さな房になった花が、今を盛りに咲き誇っている様子を思い描いたようで、お互いに顔を見合わせて笑いながら、一人が「び、みょう」と言うと、みんなもくちぐちに「そうね、綺麗だものね」、「厚かましいんじゃない?」、「花が泣いているわよ」等と囃し立て、大笑いになった。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧