文明・西と東(その二)
C.カレルギーと池田大作の対談で、感じたところを引き続き記してみる。「文明の英知」の章で、東西の文明を比較して、文明のあるべき姿を語っている。欧州と日本は共に風物が美しく、古い文化を持っているという前提で、自然は本来美しく保護されなければならない。そして、美しい自然は、人間の心と肉体にとって不可欠の要素と指摘している。当時まだ、日本の公害が著しい時代だった。
自然の美を守るという観点から見ると、仏法の生命の尊厳の思想は自然もまた人間と同じく生命体という調和の思想を唱えている。所謂、全てのものが仏性を持つ「草木国土悉皆成仏」だ。
一方、西欧では人間対自然という対立概念で考えている。自然を神と悪魔の戦いの場であるとする考えの起源は、古代ペルシャの拝火教の思想で、人間は神の側に立って、悪魔と戦う義務を負い、世界はそのための戦いの場であると考える。ここでは自然は悪魔の領域として克服する相手と考える。正に、砂漠の民の宗教である。この二元論の流れが、ユダヤ教に伝わり、その後、キリスト教、回教、また共産主義思想にも影響した。
西欧では、キリスト教の宇宙観を検証するため、天文観測で客観的事実を突き詰め、結果として科学技術が発展した。その結果して、決して、地球は宇宙の中心でなく、人間は生物界の一員である仏法に近い事実に突き当たっている。
西欧と日本、美しい自然に恵まれた環境と、進んだ社会の現状は共通点があるものの、基本の発想で大きな相違がある。対談の行われた時点では、日本は重い環境破壊に悩まされていたが、今は温暖化を除いて、かなり改善してきた。自然を大切にする日本本来の姿は評価される状態になってきた。一方、西欧は自然との対話は、自然を克服するのでなく、自然と調和して行く社会に変わっていくと思う。どうやら、自然と共生する社会の実現が次の世紀の大きな目標だ。このため、途上国では、特に環境保全に力を入れて欲しい。