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「800字文学館」

おかしな「ダイエット」

野瀬 隆平

 「ダイエット」には、かねがね疑問を抱いていたが、最近あるテレビの番組を見て、ますますその「おかしさ」が気になりだした。

 食事の量をコントロールするのが、ダイエットの元来の意味で、あるべき姿だ。しかし、それが出来ずにカロリーを取りすぎた時に、次の手段として、運動によりエネルギーを消費し、適正な体重を保とうとすることになる。
 けれども、エネルギーを消費するダイエットには、どうしても違和感を覚える。かつては、日常生活を営む中で体を動かすことが多く、摂取するカロリーと消費エネルギーとはほぼバランスしていた。それが、電化製品など便利なものが普及した今日、必要最低限だけ体を動かしていると、どうしても、摂取カロリーの方が多くなってしまう。そこで、生活の中で知らず知らずの内に体を動かすように仕向ける、という考えが出てくる。
 番組で紹介されていた一つに、こんな例があった。テレビのリモコンを手元に置くのではなく、テレビの脇など少し離れたところ置くと、操作するときに仕方なく体を動かすので、その分エネルギーが消費されると言うものだ。

 一方では省エネと称して、いかにエネルギーを使わずに生活するかを追及しておきながら、片方では、どうすればエネルギーを無駄に消費できるかを考えているのである。これほどの矛盾があろうか。十分な食料が無く、栄養不足に悩んでいた時代を経験した者から見ると、尚更その感が強い。
 近ごろの円安で食品の値段が数パーセント上がったと騒いでいる人がいるけれど、それと同じわずかな分だけ、食べる量を減らせば済む話ではないか。消費税率を上げるよりも、「肥満税」を取った方が良いとさえ思えてくる。

 最も、こんなことを言えるのも、胃の手術をして好きなだけ物が食べられない体になっているからかもしれない。いずれにしても、必要にして十分なカロリーを摂取し、体力を維持して健康的な生活が続けられるように努めたいものである。

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