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「800字文学館」

英国王家の今昔

首藤 静夫

 英国のロイヤルプリンスの名前はジョージ君と決まった。現ウインザー王家の祖ジョージ国王以来の伝統の名だとか。

 英国は、イングランド、スコットランドなど四地域から成る連合王国である。王家は現在イングランド王家に統一されている。この王家の変遷を中心に話を進めたい。

 五世紀、ブリテン島にはアングル、サクソンなどゲルマン民族の一派が大陸から侵入、先住のケルト民族を追い払ってイングランドの原形を築いた。
 九世紀前半、その中のサクソン族がこの地を統一して最初の王朝を開く。二百数十年間続いた。今日、日本でも使われる「アングロサクソン」はこれに由来する。

 ところが、その後アングロサクソンが王朝を開くことは一度もなかった。一〇六六年、仏のノルマンジー公によるイングランド征服がその後の歴史を一変させたのである。

 この仏系王家は、後継王家も含めて四百年以上続き、言葉も語彙の半分が仏語に置き代わったという。次は、二つのケルト系王家が二百年以上続く。そして現王家である。これは独系で、今日まで三百年続いている。一七一四年に時のハノーヴァー侯が、独の侯のまま英国王ジョージ一世になった。前王家が絶え、姫君の嫁ぎ先から王様を迎えた。アングロサクソン同様ゲルマン民族であるが両者に直接の関係はない。

 現王家の下で英独は二度、世界大戦を戦っている。そういえば英仏百年戦争も仏系王家の時代だった。英独、英仏王家のこの奇妙な関係はどうだろう。王家と国家は別物としても国民感情は複雑なものがあろう。
 私は今まで漠然と、英国王家は、伝統あるアングロサクソンの所縁(ゆかり)と思っていたがそうでもないらしい。しかし、長い歴史の中で、通婚もあり、互いの同化も進んで、出自よりは新しい結合と文化の創造に重点を置くようになったのであろう。

 同じ島国でも、日本は事情が異なる。だが、それゆえに国際情勢や民族問題に対する意識がやや希薄であるともいえるが。

(2013・8・8)

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