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「800字文学館」

ベリーダンス

内藤 真理子

 五年ほど前「ベリーダンサーになった娘が、レストランで踊るのよ」と言う友人と一緒に観に行った。彼女は客が飲食している丸テーブルの隙間で、ジョーゼットのストールを持ちながら踊りはじめた。やがてストールをパラリと床に落とすと、アラビアンナイトにでも出てきそうな、胸当てと、おへそを丸出しにして腰骨で止まっている、やわらかな生地のロングスカートで、お腹を、小刻みに波立たせながら音楽に合わせて踊っていた。高度なテクニックなのだろうが、手を伸ばせば触れてしまうほど近くで踊る姿が眩しかった。
 ベリーダンスは、若い女性の間で流行っているようで、観客のほとんどが、ステージの合間に、彼女と一緒に踊るのを目当てに来ているようだった。

 先日、くだんの友人から「娘が今度はライブハウスで踊るから行きませんか」と誘いがあった。
「娘は、二年間の契約で、レバノンでベリーダンサーとして踊っていたのよ。結婚もしたのよ」と、近況も聞いた。「もちろん、行くわよ」

 彼女は大人っぽく、魅力的になっていた。生演奏に合わせて、お腹を小刻みに震わせ踊りはじめ、腰を、胸を、髪の毛をと、存分に動かしていた。私は、引き込まれ、その踊りを堪能した。
 五年前とどこが違うのだろう。
 今回の観客も、八割はベリーダンスを習っている女性だったが、フィナーレで彼女は男性客を舞台に上がらせ一緒に踊った。彼をじっと見つめながら、踊りに合わせて腕から手の先をまわし、相手の顔を指さし、腰を振り、誘い、そそる。見ている私はわくわくした。その動きは妖艶で、頭のてっぺんから手足の先まで神経を行き渡らせ、むせるような色気を堂々と漂わせていた。
 過激な踊りで、筋肉を引き締め美しいプロポーションを作りながら楽しむのもベリーダンス。
 されど、男と女の世の中、成熟した女性の存在をアピールし、官能の喜びを分かち合ってこそのベリーダンスの醍醐味。
 すっかり成熟した友人の娘さんはそれを見せてくれた・・のかな。

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