太極拳の効用
「半年前にくも膜下出血で倒れ、大手術を受けた師範がいる。リハビリ中だが、最近、太極拳もできるようになったという話を聞きました」とNPO日本健康太極拳協会の楊(よう)慧(けい)副理事長が話し始めたのには驚いた。
そして「10数年太極拳を続けているので、その師範の脳回路に太極拳のルーティーンが組み込まれているのではなかろうか。他人が見ると太極拳になっていないかもしれない。しかしご当人ができていると信じているからこそ、リハビリに拍車がかかっているのだろう」と副理事長は続けた。
この話は13年前に太極拳を始めて以来聞いてきた効用のなかで、最高のものといえる。これまでも協会は『どこでも、いつでも、だれでもできる座式太極拳』を開発し、身体障害者の健康維持やリハビリに役立っている。さらに、このために介護士の支援制度を確立した。この座式太極拳を独立行政法人国立病院機構徳島病院との共同研究で、パーキンソン病患者の運動機能改善と転倒予防用に改良した。この成果は既にDVDで利用可能であり、社会に貢献している。冒頭の話が科学的に実証されれば、より以上に貢献できるに違いない。
今まで実感した効用は精神的なものと身体的なものがある。前者の最大の効用は雑念を払い、無念無想の境地に入ることから始めるのでストレスから解放される。さらに指導する立場になると絶えず太極拳の理論や実技の勉強が必要なため、脳に刺激を与える緊張感を維持できることである。
身体的な効用は持久力の増加。有酸素運動の典型で、足腰の筋肉を使うことで疲れにくくなっている。また腹式呼吸をするので、血流が良くなり免疫力が付いてくるなどがあげられる。
3年前と同様、1月の新年会での余興に、太極拳の演舞と指導を要請され、快諾した。今年4月から副理事長指導の特別講座を受講中なので、前回より進化した演舞と呼吸法や血流改善の効果を実感してもらえれば幸いだ。