マウナケア
ハワイ島の最高峰、4,205mのマウナケア山頂に輝くサンセットを見るツアーに参加した。ガイドを兼ねた運転手は10人乗り4WD(四輪駆動車)で、滞在するコンドミニアムまで迎えに来てくれた。既に6人の客が乗っている。
大学で日本語を専攻したという若く朗らかなハワイ青年は、道中流暢な日本語でハワイ島の観光案内をする。冗談を交えながらの豊富な話題は乗客を飽きさせることがなかった。
平地ではTシャツと半ズボンで過ごせるハワイ島でも、氷点下になることもあるという山頂では防寒服が必須だから、ツアーは膝下まである防寒ジャケットや手袋を用意してくれていた。大きな標高差にツアー客の体を慣らし呼吸を整えるために、4WDは途中休み休みデコボコな急斜面を山頂目指して登る。
遥か雲の上にある山頂に立つと、目の前には澄み切った青空と白い雲海、その間に太陽が燦々と輝いている。すべてが様々な色に変化する壮大な日没の時間を待つ。太陽は少しずつ沈むに従い、明るい火の玉に燃えて周りの空と雲を茜色に染めていく。
山頂は空気がきれいで年間を通して天候に恵まれているから、天体観測のメッカとなっていて各国の天文台が建っている。日本の「国立すばる天文台」もその一つだ。「マウナケア」とは、ハワイ語で冬になると雪が積もる「高い山」を意味する。そう、「南の島にも雪が降る」のだ。
太陽が完全に沈むと、暗い空があっという間に満天の星空に変わる。ツアーの車は山頂から標高2,800mの観測ポイントまで、真っ暗闇の中を上下左右に激しく揺れながら下降する。標高の高いところでは濃度が低くなって、人間の視力が落ちるからだ。
暗闇の中、ガイドは全員を外に出すと天空にレーザー光を当て、星座の説明を始める。GPS内蔵でコンピュータ制御による天体望遠鏡を車の外に設置して、客の一人ひとりに覗かせる。その徹底したサーヴィス振りにも感動させられる。
夕陽ツアーが、天の川の雄大さに息を呑む天体観測観光に変わる瞬間だった。