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「800字文学館」

ロシアにゴルフ・コースはあるか ペレストロイカ以後

都甲 昌利

 帝政時代、ロシアの大地にゴルフ・コースが存在したかどうかは知らないが、1917年ロシア革命以後は資本主義的スポーツとして禁止されていたゴルフ場が開設されたのは1996年のことである。1989年、ゴルバチョフのペレストロイカ、市場経済導入など自由化のお陰である。モスクワの郊外約30キロにある、白樺林に囲まれアメリカ人が設計した6390ヤード、パー72の堂々たるゴルフ・コースである。欧米に比べても決して引けを取らない。

 このゴルフ場開設の年、シベリア航空路開設30周年記念でモスクワ訪問した時、支店長が我々を連れて行ってくれた。クラブハウスは丸太を組み合わせたフィンランド風でロッカールーム、レストラン、プロショップは英国やアメリカと変わらない立派なものだった。新しいせいかそれより豪華に見えた。
 ウイークデーだったので、プレイする者の人影は見えない。練習場で身体をほぐしてコースに出た。キャデーはいない、セルフカートである。
 14番ホールをプレイしていたとき、あとから一人でやって来た女性ゴルファーに追いつかれてしまった。先に行かせるのがマナーである。「どうぞお先に」。彼女はスウェーデン人でご主人は大使館員、週2回はプレイしていると言った。モスクワでプレイするのはアメリカ、英国、ドイツ、日本、韓国の人たちで、土日祭日はかなり混雑するそうだ。

 モスクワ勤務時代、われわれ駐在員はこれといった娯楽がなかったので、せめてゴルフ場を造ってくれとゴルフの大好きなアメリカ人と一緒にソ連当局に懇願したが、「ソ連には土地がない」と言って拒否されたことを思うと感慨無量であった。

 ロシアから有名なゴルフ選手が輩出しマスターズ、全英オープンに参加する選手が出たらロシアは真に意味で西欧の一員となったといえるだろう。プーチンは柔道を愛するがゴルフはやらない。なぜだろうか。

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