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「800字文学館」

もう一度行きたいゴルフ場

松谷 隆

 神戸でゴルフを始めてから、来年で50年になる。ラウンド数は1,000に近い。アメリカ駐在が合計13年に及んだので、その間に回数を稼げた。

 日米だけでなく、イギリス、ドイツ、オーストリア、スロベニア、スペイン、スエーデンなどでも楽しんだ。欧米では日本と違い、セルフラウンドであるため、当初キャディなしのゴルフに戸惑いは隠せなかった。

 さて、いま「もう一度行きたいゴルフ場は」と聞かれれば、躊躇なく「スロベニア共和国のブレッド・ゴルフ&カントリークラブ」と答える。理由は、1975年秋クロアチア共和国のザグレブ市に赴任後、楽しんだブレッド湖やスキー場の景観をもう一度見たいとの思いと外国で初めてプレーしたゴルフ場であるからだ。当時ユーゴスラビア連邦で唯一のこのゴルフ場は1935年、ユーゴスラビア王国の国王が別荘内に作らせたもので、第2次大戦開始時から放置され、72年に再興された。

 ゴルフセットも到着し、やっとゴルフ場に向かったのは赴任1年半後。ザグレブから車で片道約5時間かかるので、宿泊せざるを得ず、家族づれとなった。ホテルで家族をおろし、ゴルフ場に向かう。
 駐車場には車5台しかない。クローズドかと思いながら、プロショップに向かった。幸いドアーは開いていた。「プレーをしたい」「大歓迎、今日は2組だけなので、すぐ出られるよ」「えっ!」だった。
 1年半ぶりのティーショット、ボールは200ヤード超えたバンカーへ一直線。

 帰任までの2シーズンほぼ毎月通った。あるとき支配人が珍しくにこにこしていた。「ご機嫌だね、いいことがあったの」「今日はベオグラードからヤパンスキーが20人も来て、プレー中だよ。一緒なのか」。
 聞くと、日本大使をはじめとするベオグラード駐在の日本人のコンペティション。支配人にとっては大入りなので、ご機嫌なわけだ。

 スロベニアで2004年には4カ所だったゴルフ場が現在では15カ所まで増えている。ブレッドでの盛況ぶりを見たいものである。

(平成26年1月29日)

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