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「800字文学館」

OBペンクラブのルーツ発見

大泉 潤

 1727年秋、21歳のベンジャミン・フランクリンはクラブを作り、ジャントーと名付けた。由来は徒党・秘密結社を意味するスペイン語である。有能な社会人が金曜日の晩に集まり、順番に、倫理・政治ないしは自然科学に関する一つの問題を提出し、仲間の討論にかける、また三カ月に一度は自分の好きな題目について論文を書き、提出して読む約束であった。討論は議長の司会の下に、真理探究という真面目な精神で行う、議論のために議論するとか、相手を言い負かすために議論するのではない。議論が喧嘩腰になるのを避けるために、独断的な言い方や、真っ向から反対するといったことは一切禁制となり、それを破る者には少額の罰金を課することとした。

 メンバーは10人でスタートした。公証人の写字職、友達思い、本好き、詩の作者、独学の数学者、測量師、靴屋から測量技師になった人、指物師、鷹揚で機知に富んだ財産家、商人の番頭などであった。約290年前、フィラデルフィアに誕生した、心ある人々のクラブは、世を広く深く観察し、まずは仲間で議論し、相互啓発を図るものであったようだ。そのスタイル、テーマの選定、激しく熱心な討議の模様が目に浮かび、しかるに冷静で、真摯な姿勢は、時空を超えてわがペンクラブに伝わっているようだ。

 多忙を極めたフランクリンは、勉強の為に、日曜の教会への出席の時間を惜しみ勉強し、読書した。その中から、人生の指針として、過失を防ぎ、良い習慣を身につけるため、徳目を数多く収集した。そして選択、推敲したのが徳と戒律と題した13項目である。節制、穏健、規律、決断、節約、勤勉、誠実、正義、中庸、清潔、平静、純潔、謙譲をあげた。その後、教育に対する情熱が結実してペンシルバニア大学設立につながった。

 本箱の奥から取り出し、読み始めると、アメリカ創生期の先覚者の人生がよく理解できる。併せてわがペンクラブと通じるものを発見し、ご同慶の至りである。

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