作品の閲覧

「800字文学館」

困ったゴミの処分

濱田 優(ゆたか)

 下水の排水管が詰まりトイレもキッチンも使えなくなった。
 業者を呼ぶ間もなく、自分で詰りの解消に取り掛かる。合流枡や中間枡に溜まった汚泥等を搔い出し、下流側からからホースを差し込んで配管中の汚物を流し出しては掬い取る。と、書けば簡単だが、配管に詰まった紙類の塊をほぐすのに時間が掛かる。
 寒い二月初めの夕刻、食事もせずに悪戦苦闘すること二時間余でやっと水を流せるようになった。

 次の難題は90Lのポリ容器に溜まった大量の汚物の処分である。違法投棄もご近所への迷惑行為もしたくない。
 夜間も通じる区の問い合わせセンターで廃棄物の相談窓口を聞き、翌朝一番で「清掃事務所」に電話をした。
 ところが、「汚物混りの廃棄物は家庭ゴミ収集の対象ではない」と〝杓子定規〟の解釈を聞かされ、し尿は「清掃・リサイクル部」とパスされる。
 次の窓口でも「し尿の収集はするが、下水に流れ出た汚物は対象でない」と相手にされず、臨時の廃棄物は処理業者に直接頼むのが普通と〝たらい回し〟をされた。
 仕事が入るのだから業者は喜んで飛びつくと思いきや、「汚物混じりの廃棄物を扱う資格を持っていないので受けられません」と差し戻される。
 忌々しいけれど厄介物を放置するわけにいかない。再度区の窓口に泣き込んだ。
 今度はTと名乗る別の職員が電話口に出て一連の話を聞いてから、
「それはお困りでしょう」と、はじめて住民を思いやる言葉を掛けてくれた。
 彼は、廃棄物の内容は大部分が紙で汚物は僅かと確認すると、関係者で再検討すると約束してくれた。待つこと30分、
「水切りをして小分けをしたら生ゴミとして収集する」
 という望ましい結論がもたらされた。
 Tさんには感謝だ。が、役所に彼のような人は少ない。相談窓口が出来たり、物言いが丁寧になったりしても、「よけいな仕事を持ち込むな」という本音が透けて見える対応がほとんど。お役所仕事が住民本位に変わるのはまだ前途遼遠と思われる。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧