昭和天皇とゴルフ
余り知られていないが、大正時代、新宿御苑に9ホールのゴルフコースがあり、皇族方の専用ゴルフ場として使われていた。中でも昭和天皇(当時皇太子)はかなりのゴルフ好きで、ここで腕を磨いていたという。昭和5年、アメリカの名プロ・ゴルファー、ウオルター・ヘーゲンが来日したとき、彼はこのコースで昭和天皇に妙技を披露したという。当時、使用した菊の御紋が付いているスコアカードが兵庫県の広野カントリークラブ内のJGAミュージアムに展示されている。箱根・富士屋ホテルからは天皇が使用されたとされる古色蒼然たるパターが発見され、これもミュージアムに展示されている。大正11年、英国のプリンス・オブ・ウエールスが来日したとき、昭和天皇は殿下とペアを組んで親善試合を行ったという。
新宿御苑の資料によると、四谷、千駄ヶ谷、代々木に及ぶこの広大な土地は、かつては信州・高遠藩主の内藤家の下屋敷で、徳川家康が江戸城入城の際、家臣だった内藤清成の武勲を称え授けた土地と伝えられている。明治維新後の明治5年にこの土地を国に上納し、国が皇室庭園として西洋庭園と日本庭園を合わせた大庭園を誕生させた。その美しい芝生を利用しゴルフコースが造られた。
コースの設計者は皇室に関係ある大谷光明。西本願寺門主の3男として生まれ、イギリスに留学中にゴルフを学び帰国後、数々のゴルフコースを設計し日本のゴルフの父と呼ばれた人物である。
戦争ムードの昭和に入り支那事変から太平洋戦争で昭和天皇はきっぱりとゴルフを止められた。戦後も再開されることはなかった。ゴルフ好きがゴルフをやめることは断腸の思いだったに違いない。皇太子殿下(今上陛下)はテニスに専念し良きパートナーを得られた。現皇太子殿下は登山、趣味としてはヴィオラをお弾きになり、ゴルフには興味がなさそうだ。ゴルフ好きの私としては皇室にゴルフの伝統を引き継いで頂きたいと願う。ゴルフができる時代は平和なのである。