作品の閲覧

「800字文学館」

超成熟社会の発展のために(その三)

稲宮 健一

 寿限無寿限無…、食う寝るところに住むところは長寿をして、生活に困らず暮らせる望みを表した落語の一節で、一昔前の幸せとわだった。もし、世界中の総ての人が今のままの消費生活を営むとするなら、二〇五〇年には今の三倍のエネルギー消費が発生する。これは社会の破綻だ。

 小宮山宏(元東大総長)の掲げる「プラチナ革命」では、エネルギー効率を今の三倍に上げれば、先進国は現状維持、途上国は先進国並みに向上する生活が可能であると主張している。ではそれを実現する戦略は何か。

 日本の全エネルギー需要の二四%の運輸ではハイブリッド、電気、燃料電池に取って代り、かつ車両の重量を半分にできれば、燃費を1/10にできる。十八%の家庭では日本の家は夏向きで建てられているので、建物の断熱を良くすれば、冷暖房エネルギーを1/3に減らせる。産業用、家庭に共通する分野で、エコキュートを使えば、ガスや、石油の四五%で電力を作り、残りの四二%で湯が作れる。現在の火力発電所の効率は六〇%で世界一を達成している。産業用エネルギーは四二%であるが、製造現場での利用効率は世界最高を達成している。

 しかし、エネルギー効率の向上だけでは幸せにはならない。特にこれから増える高齢者が、自立し、元気に社会参加を果たせて、初めて成熟度が向上する。そのため、頭の活性化が話題になり、暗算や、連想ゲームなどが取り上げられるが、面白くない。もっと積極的な社会参加が元気のもとになる。企業OBペンクラブのように直接社会への発信を続けられることは実に良い。少ないエネルギー消費で幸せ感が広がれば、平和な世界の実現に大きく寄与する。元気な体を支えるため、ウェアラブル・センサの携帯とビッグデータ処理の組み合わせで、予防医学が無駄な医療費を減らせる。

 日本は世界で一番速く高齢化になるので、超成熟社会のトップランナだ。全世界の高齢化社会の手本になれれば良い。

(二〇一四・二・十三)

 寿限無、寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末 食う寝る処に住む処 藪ら柑子の藪柑子 パイポパイポ パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの 長久命の長助

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧