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「800字文学館」

地図への誘い(六) 地球の息吹き・ハワイ諸島

阿部 典文

 十数年前のことである。私はハワイ諸島のクルーズ旅行に出かけ、ハワイ島で、海に直接流れ込む灼熱した火山溶岩流を目の当たりにして、地球の息吹きを身近に体験することが出来た。

 加えてハワイ島の火山マウナロア(標高四千百七十米)を東の端として、西のロシア・カムチャッカ半島まで数千キロに及ぶ海底火山脈「皇帝山脈」が存在することを学んだ。
 この山脈は海洋地殻を構成する太平洋プレートが一年に数センチ西方に向かって移動し、地球内部の溶融マグマの上昇流・ホットスポットに差し掛かり、マグマを火山から放出して形成されたと考えられている。
 このような科学的知見は「プレートテクトニックス」と呼ばれる最新の地球科学が解明した成果であり、また第二次世界大戦後、音響測深儀による連続的な水深測定が可能になり、全世界の海底地形が明らかにされた結果である。

 ハワイ諸島は水面下に沈み込んでいる山脈が海面上に姿を現している僅かな部分と考えられ、付近の海底盆地から八千米以上直接聳え立つ大山脈を形成している。
 この海底山脈の面白みは、ハワイ島から隣接する西方の休火山島に移行するにつれ標高が順次低くなり、次第に海面下に沈み込んで行く点である。

 したがって現在火山活動を継続しているハワイ島も、西方に移動し、ホットスポットを通過すると休火山となり、やがて数百万年後には海底下に沈み込む宿命を担っている。
 因みに現在既にハワイ島東方の海底では新しい火山噴火が観測されていることが知られ、二十世紀初頭ドイツの気象学者であったアルフレッド・ウェゲナーが千九百十二年発表した『大陸漂移説』の生きた証人となっている。

 なお太平洋プレート漂移の結果生まれた日本海溝が大地震の巣窟であり、二千十一年発生した東日本大震災は記憶に新しいところとなっている。

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