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「800字文学館」

もう一度行きたいゴルフ場(その2)

松谷 隆

「アメリカでもう一度行きたいゴルフ場はどこか」と聞かれると、正直、答に困る。というのは、行きたいところが多すぎるからである。よって、パブリックコースとプライベートコースそれぞれに挙げてみたい。

 まず、パブリックコースでは、シリコンバレーにある、市営のサンタクララ・ゴルフ&テニスクラブである。1970年オープンのフラットなコースで、難易度も高くない。なのになぜもう一度かというと他のコースではなかった経験をしたからである。

 事務所から車で10分なので、手軽にいける。出張者の時差ぼけ解消のためにも使えた。赴任2カ月後の89年10月17日午後3時過ぎに出張者と一緒にスタート。8番ホールに向かうとき、「ドーン」という大音響と風もないのに「ザァーザァー」と波のような音が聞こえた。午後5時5分だった。ふと見上げると、10本以上の高圧線が触れ合わんばかり。
 サンフランシスコ湾沿岸に被害を齎したM6.9のロマ・プリータ地震である。幸い当方、社屋や社員には被害なし。ゴルフ中止、すぐ事務所に向かったけれど、大渋滞で3時間もかかったのには参った。

 次は、スコアである。96年6月18日のこと。本社の創立記念日に合わせ半ドン、午後1人で出かけ、アメリカ人3人に加わった。3ホール修理中で、パー69だったせいか、好ショットが続き、上がって見れば39、38の77。パー72で5オーバーなら自己新だったのに、今でも悔しい。

 その悔しさを払しょくできるチャンスが1度だけあった。99年7月2日、一時帰国した家内の到着予定が午前10時。それまでに18ホールを終えようと、午前5時半に3人組とスタート。前半は3番パー4でイーグル、5番ボギー、あとは全部パーで1アンダーの35と絶好調。ところが、11番から待ちが続き、15番では到着便が上空で旋回を始めたのが目に入る。イライラが募る。結局後半49で失敗。その上、家内の迎えに1時間遅刻で、ぼやかれた。
 これをぜひ晴らしたいのだが……

(2014年3月25日)

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