作品の閲覧

「800字文学館」

罰があたった

川村 邦生

 66歳の春、駅ホームまで残り数段の上り階段で急に左足が脱力状態になり、足を引きずりなんとか乗車しそのまま吊革に両手でぶら下がっていた。予定の渋谷までの間にしびれと痛みが増してきた。はいずりながら下車しうずくまっていたが治まらず救急車を呼んでもらい病院へ運んでもらった。原因がなかなか分からず搬送数時間後に、急性下肢動脈血栓梗塞と分かった。膝の裏辺りにある動脈分岐箇所に血栓がつまり下肢の梗塞が起きたのだ。詰まった血栓を除いた後でも猛烈に腫れ上がり、一部分が壊死し切断除去が必要と言われた。
 ゴルフ大好き人間の小生が、「足が無いとプレー出来ないので指切断だけで
 すませてください」と医者に懇願し呆れられた。幸い壊死箇所は、左足人指し指一本とすねの筋肉ですみ、切断除去し3カ月と3週間の病院生活後無事退院した。固まった足首等のリハビリを続け退院後3カ月して晴れてゴルフ復帰を果たした。
 この病気になりやすい人は、高血圧、高コレステロール、動脈硬化、いわゆるメタボと言われる人だ。10年ほど前から血圧が少し高めで降圧剤を飲んでいたが、医者知らずでいたって健康であった。年1回の人間ドックでメタボを指摘されてはいたものの、あまり気にせず飲み食いしていた。ビールと焼き肉、カラオケ、最後の締めが餃子とラーメンと暴飲暴食をする事も度々あった。
 じわじわと病気の誘因が重なり、今回一気に破裂したのだ。罰があたった。
 病院食を約110日間採らされたおかげで、体重は10キロ以上減少、血圧は正常になり薬不要となった。血液検査でも問題なしの健康体になったが、ただ動脈硬化は進行を遅らす事は出来ても治すことは難しいので、今は血液さらさら剤を服用している。

 無病息災の人は油断するとこの様な事態が起こりえる。一方、一病息災の人は、日頃から体に気を付ける習慣が出来ており長生き出来るようだ。これから一病息災にとどめ長くゴルフをしたい。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧