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「800字文学館」

医療ミス?

川村 邦生

 数年前医療ミス?が身近で発生した。検査入院した四十才の部下が死んだ。入院翌翌日の朝八時、奥さんは入院先を見舞い、その後自分の職場に向かった。通勤途上病院から緊急連絡があり駆けつけた時にはすでに危篤状態であった。持病で十二指腸潰瘍があり、今回は四回目の入院だ。直近は半年前に切らずにすむと思われる潰瘍を手術され今回はその再発と思われる症状が出た。下血があったので、又出ちゃったと言って入院したのが、死の三日前だった。

 部下の死を信じられないまま直ぐに病院にかけつけて医者に面談依頼したが、「ご遺体はご自宅に帰られ家族へ説明も済んでいますので、面談は出来ない」と素っ気ない対応振りだ。検査入院中で死の数時間前奥さんと面談し元気にしていた男が、そんなにあっさりと死んでしまうのかとの疑問が高まった。病理解剖の話も出なかった。どう考えても何か隠しているとしか思えなかった。
 二、三週間前、血圧が急に上がった事で血圧降下剤をもらっていた。その時何故原因を調べなかったか。今回の検査入院時、状況は判っていたはずだ。死因は潰瘍でなく血圧関係の病気ではないかと思えた。検査入院させ潰瘍検査だけで済ませ、突然血圧が上がった原因を調べなかった病院。精密検査を行えば死ぬことは防げたのではないか。
 間違えて違う臓器を手術すれば勿論医療ミスだが、このように検査中に、起こりうることを予想できなかった、又は見落としたのも当然医療ミスになる。

 ご遺族は突然の事に気が動転していた。特に年老いた両親は、解剖など遺体を傷つける事への抵抗があるとの理由で病院側の言うままですませた。死亡診断書には「失血性ショック死、失血場所不明」と書かれてあった。疑念を持った原因がそれだ。

 世の中どこにもウヤムヤにされ、弱者が泣寝入する事がある。医療の世界でもだ。仲間を庇う意識と隠ぺい体質が有るのではないか。無責任時代が始まり、その傾向が高まっていることを懸念する。

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